皆さん「上がり框」という言葉をご存知ですか?
玄関など、家の上り口の縁に渡してある横木(大辞林 第三版より)のことです。

「靴を脱ぐ」歴史のある日本人にとって框に腰をかけて靴を履く事は、日常ですね。
しかし、近年の「バリアフリー化」に伴い、この「上がり框」のない家が増えてきました。玄関から全ての部屋が、段差のない家づくりです。素材のみの違いで、空間を仕切る方法ですが、はたして本当に有効なのでしょうか?

マンションなど、広いスペースがありスロープをつける事が簡単な場合は有効ですが、一戸建ての場合では、階段があったり、敷地面積の関係上玄関までのアプローチにスロープをつけられないなどの様々な理由があり段差が必要な場合がほとんどです。

「上がり框」には、座って靴を脱ぐ、靴を綺麗に並べられるなどのメリットもあります。一つの方向から物事を捉えるのではなく、お客様の暮らしにとってどちらがメリットかを選ぶ事が設計の上ではとても重要となってきます。

また、玄関には「タタキ」という框にあがるまでのコンクリートやタイルでできている土間の部分があります。一見、なんの変哲もない玄関のようにみえる家でも、「靴」と、「玄関扉」、「タタキ」と「上がり框」には深い関わりがあり、位置関係と寸法には、注意して設計しているのです。