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【手付金が売買代金の一部ではないって本当?】後編

By risola_master, 2016年12月1日

さてさて、今日は前回の続き、手付金のお話の後編です。

前編で手付金の考え方の意味合いが何となく伝わったのでは?と思います。

後編では、「履行に着手する」という意味合いについてご説明したいと思います。

ちなみに、この意味が曖昧なままだと、後日トラブルになってしまうことがありますので一般の取引では、「履行に着手するまで」ではなく、一定の期日を定め、その日までであれば「手付け流し」または「手付け倍返し」ができるような内容であることが多くなっています。

ただし、売り主が宅建業者(不動産屋さん)の場合は、一定の期日を定めること自体、「買主の行使期限」を定めることとなり、無効とされますので、「履行の着手」の解釈で論争にならないよう、その解釈については契約前に確認したほうがよいかと思われます。

さて、「履行に着手する」意味合いについて、売主側のケースは一般的に以下のようなタイミングになります。

(1)売り主が物件を引き渡したとき
(2)売り主が買い主のための所有権移転登記申請手続きに着手したとき
(3)売り主が物件の一部を引き渡したとき
(4)売り主が買い主の事情で所有権移転登記を残代金決済前に行ったとき
(5)買い主の希望に応じて建築材料を売り主が発注した場合や工事に着手した場合

買主から見た場合に、売主(不動産屋さん)が(1)~(5)の行為を行った以降は、「やっぱり買うのをやめたいので、手付金を放棄して、契約をキャンセルします」といったことができなくなります。

要は、契約を解除できず、残代金を支払う義務が発生します。

逆に、買主側のケースは以下のようなタイミングです。

(1)買い主が内金(手付金ではなく、売買代金の一部)を支払ったとき
(2)買い主が新居への引っ越しを前提に引っ越し業者と契約を締結したとき
(3)買い主が新居用の家具を購入したとき(どこでも使用できるような家具は除く)
(4)引き渡し期日を経過し、残代金支払いの準備ができているとき
(5)残代金を支払ったとき

逆に、売主(不動産屋さん)から見た場合に、買主(お客様)が(1)~(5)の行為を行った以降は、「やっぱり売りたくなくなったので、この物件を売る事を辞めます」といったことができなくなります。

ちなみに、最高裁の判例では「履行の着手に当たるか否かは、行為の態様、債務内容、履行期の決定の趣旨・目的、関連する行為の時期等諸般の事情を総合的に勘案して決めるべき」(総合考慮説)となっています。

なんだか、よく分からないですね(笑)。

ただし、相手方が履行に着手すれば、全く契約を解除できなくなるのかと言えば、厳密に言えばそうではなく、相手方が契約書に定める債務を履行しない場合に(相手方が誠実ではない場合など)は、催告した上で、契約を解除することができ、なおかつ、相手方に対して、損害賠償請求(違約金)をすることができるようになっています。

また、仲介業者が介在する場合、仲介業者は契約が成立しさえすれば、依頼者(売り主または買い主)に仲介手数料を請求できるというのが原則なので、手付金を放棄して契約を解除しても、仲介手数料を請求されることがありますので、覚えておいていただければと思います。

まあ、通常はこういったことはまず起こらず、スムーズにお互いニコニコしながらお引渡しができるので(笑)、ご安心下されば良いかと思いますが、万が一の為に、覚えておいて損はないかと思います。

以上、手付金のお話、後編でした!